ぎりぎりまでガラスに近づいた俺の目が見たのは壁だった。 ガラス一枚隔てた向こうにある壁。だけど鮮明。 そりゃそうだ、ガラスは今朝俺がピカピカに磨いたばかりだ。 (……ったく、だから雨が降ったのか?) (今日って降水確率ゼロじゃなかったか、おい?) 無駄なことを呟いて。 本当に、まったく、ついてない。 そういや掃除とかすると雨が降るんだよな、いつも。 去年の夏だって、網戸を全部洗い流した直後だぜ、夕立がきたの。 洗車すると必ず雨になるっていうのは俺の会社の後輩のジンクスね。いままで百発百中。すごいね、泣けるね。 まあ、俺だって似たようなもんだけど。百発九十中くらい? ははは……カッコワライ、と。 に、してもさー。 久しぶりにアイツが家に来るってんで、俺、かなり気合い入れたんだぜ。ゴミだらけの六畳間、いっしょけんめ掃除機かけてさ。前に汚いって顔しかめられたトイレも磨いてさ。 あー、ちくちょ、どしゃぶりだよ。 雨って塵が混ざってるんだよな。だから雨で濡れたとこが乾くと汚くなるんだよ。 そんなこと、こうなっちゃもう、どうでもいいけど。 (あーあ、掃除したとこ、アイツに見てもらいたかったぜ) 迫る壁。ぶつかる車。 飛び散るガラス片は、 砕けても、ぴかぴか。 |
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